帰国子女と発達障害

海外で子育て

幼少期を海外で過ごし、日本に帰国後、発達障害を疑われるケースは多いようです。

統計があるわけではありませんが、多方面で話を聞いてきた所、そんな印象を持つようになりました。

似たような、同じ状況を経験した者として、お伝えしたいと思います。

文化の違いが発達障害の疑いになる

いきなり結論を書いてしまいましたが、各国の文化の違いによる子供の行動を「協調性のない子・個性的な子・集団に馴染めない子」と捉えられてしまう事があるようです。

うちの息子の場合、アメリカの幼稚園では「登園したら、Good morningと先生に言い、ハグしよう」と習っていました。お友達との関わり合いに関しても「ぶつかったらSorryと言い、ハグしてあげよう(※)」なんて習っていました。そしてアシスタントの先生方は南米出身の方も多く、登園して息子を見るなり、「おはよーーー!!!待ってたよー!!ハグ&ほっぺにキス」なんて方も多かった。降園時も同じく。日本よりも人と人との距離感が近いアメリカの園でした。

※これはアメリカの文化というよりも、2歳児クラスで言葉が少ない子も多かったために、Sorryと言えなくても、ハグして謝る気持ちを見せると先生が教えたことと思います

しかし、日本に本帰国し、インターではない日本らしい地元の幼稚園に入園した所、「お友達や先生との付き合い方の距離が近い」と指摘されてしまいました。

これは息子が人との付き合い方を理解していないのではなく、完璧にアメリカの文化を引きづっていた事によるものです。

アメリカでは「こうしましょう!」と習っていたことが日本に帰国したとたん「それは良くない」と言われる。よくある事だと思いますが、それを発達障害特有の「相手の気持ちを察することや、相手の表情を読み取ることが難しい子」と判断され、発達障害を疑われてしまったのです。

正直、先生に指摘を受けた時はびっくりしてしまいました。フレンドリーすぎると「変な子」になってしまう。横の並びの教育が大切な日本において、他の子と違うことをする子は指摘されてしまうんだと思いました。

でも・・・それから1年たって言える事ですが、この文化の違いに関しては、幼稚園生活に慣れるにしたがって消えて(馴染んで)いくので大丈夫。周りのお友達がハグやキスをしていない事を自ら見て学びます。1学期位は様子を見て、言葉でも話して聞かせ、それでもお友達との距離の取り方がおかしく見え、心配になるようであれば専門機関に相談すればいいと思います。大人だって頭でわかっていても身についてしまった習慣を瞬時に変える事ってできないと思います。子供はすばらしい順応性を持っていますが、ゆったりした気持ちで見てあげるのがよさそうです。

バイリンガル教育は言葉の遅れにつながるの?

言葉の遅れも発達障害を指摘される項目の1つです。

バイリンガル教育をすると言葉の発育に遅れがでるか・・・の答えはNO。と言われていますが、実体験として聞く、複数言語が飛び交う環境下で育つ子供は言葉に遅れがでることが多いようです。研究としては全く影響ないと言われていますが、「二か国語環境で育っている」というと、アメリカの小児科の先生、アメリカの療育の先生も「半年くらい遅れても正常。だって、二か国語もやってるんだもの!」と言っていました。私たちが住んでいたエリアはスペイン語を家庭で話している子供が多かったので、バイリンガル環境で育つ子供に対する理解がとてもありました。なので、2歳で発語が10語くらいしかなかった息子ですが、「大丈夫よ。男の子だし」とよく言われていました。

そして本帰国。幼稚園に無事入園したものの、メインに英語を話していた息子。日本語の理解はできていると思っていましたが、やはり家族以外の人が話す日本語に慣れていなくて先生とのやりとりが難しかった。毎日一緒に登園して息子の英語交じりの言葉を私が翻訳するわけにもいかず、頭を悩ませることが多かったです。もっと日本語理解してると思ったのに!と思う事が度々でした。

入園から2か月くらいした頃、先生から「日本語の理解が遅いのでは」と。上記で書いた「お友達とのかかわり方の距離感」の件もあわせて発達診断うけたらどうかと言われてしまいました。言われたら仕方ない!と自治体の発育相談に相談。発達検査を受け・・・結果は「発達障害ではない。グレーでもない。グレーに近い軽度って感じ」との事。要するに成長がちょっと遅い子。そして多言語環境で育ったから発語に遅れが出たが、まだ帰国して間もないのですぐに追いつくでしょうとのことでした。

そしてお決まりの文句。「男の子だしね」って。

言葉が遅い=発達障害ではありません。それはバイリンガルや帰国子女関係なくです。

ただ、発達障害の子の多くに「言葉の遅れがみられる」というだけ。

不安を感じたら専門機関に相談するのは良いことだと思いますが、子供の育った背景を細かく説明しないと勘違いされる傾向にあります。我が家を担当してくださった方もおっしゃっていましたが、まだまだ日本ではバイリンガルや帰国子女に対する研究結果が少ないとのこと。他国での生活様式からその国でかかわった人々がどう子供に接していたか、親が細かく説明して聞かせないといけません。簡単に「発達障害ですね」と言われないようにしないと。と私は感じました。

発達障害の診断には文化の違いが大きく影響する

日本の発育相談・発達障害の診断で見られることは「日本の生活において生きづらさを感じていないか」という事です。外国で生活をし、日本の生活に放り込まれ、カルチャーショックと戦っている子は協調性にかけ、自己主張が強く(我が強く)、お友達との関わり方も理解していない=「生きづらそう」に見えることがあるよう。そうすると、「少し助けを頂いては?」なんて流れになるようです。

「この子は帰国子女だ。この子は海外で育った子だ」と頭では理解しているのに、「でも他の子とずいぶん違う」と思われると軌道修正させられてしまいます。時間がかかって当たり前の事なので、ゆっくり関わる人達に説明し、理解を求めていく必要があるようです。

早まらないで待ってあげて

いくら子供の順応性が高いからって、数年かけて身に着けてきた海外の文化を、数日で日本仕様に合わせ、生まれも育ちも日本の子供たちに馴染むって無理なことです。未就学児で海外生活していた子の事を「帰国子女とは呼ばない」とか、「親が帰国子女って呼びたがってるだけ」なんて言われることがありますが、海外で生活していたという事実をしっかり受け止めて、どうしたら「生きづらさ」を感じずに日本の生活に馴染むか。低年齢だからこそ頭での理解ができずに実体験でしか調整できない事ってあります。親の力が問われる事ですが、親が頑張ってあげないといけない事柄です。

コメント